2019 Best 50 Albums
2019 Black Music Best 50 Albums by planet.ky
2019 年(ほぼ)リリースのブラックミュージック(R&B, Hip-Hop など) アルバム ベスト 50 です。 ランキングは当サイト独自です。
画像クリックでレビューページへ。
Tyler, The Creator / Igor
Tyler, The Creatorの2年振り5作目。主人公(Igor)の恋愛(失恋)を題材にしたストーリー性のあるアルバムになっている。切なく、女々しいところもあるLyricは今まで以上に判りやすく、生身の人間に訴える、ある意味万人受けも可能な作品でもある。よれた感じが特徴的なRapは少な目で、Lyricに合わせた抒情的なメロディが重視されている。上物はそんな感じだが、ベースとなるTrackはしっかりHip-Hopなところが面白い。客演もしているKanye Westの世界に少し近づいたのかなとと思う。
Solange / When I Get Home
約3年振りとなるSolangeのアルバム4作目。前作と同じように、短い曲をインターバルで繋いでいく構成だが、内容はだいぶ違って、かなりの実験作となっている。ゆったり目で、ときにはメローでジャジーなTrackがベースになるが、メロディにサビ、フックがほぼないのが最大の特徴で、短いフレーズを時に断片的に紡いでいる。茫洋としたサウンドにSolangeの囁くような抑えたVocalが浮遊しているのだが、そのVocalもバックの演奏や効果音などと同じ扱いで、それらが相俟って深淵な空間を作り出している。そこそこ豪華なGuestも全然目立ったなくて、ある意味コマーシャリズムを否定しているのかなとも思ってしまう。
Lizzo / Cuz I Love You
話題のプラス・サイズ・ディーバ、Lizzoのメジャーデビュー作。テレビ、ドラマ、映画に出演したり、セーラームーンのコスプレでフルートを吹いたりとArtistの枠に捉われない活動をしている人だが、このアルバムは本格的なR&B作品。
判りやすくて、アップでノリの良い曲がほとんどで、Track自体は虚飾が無く、懐かしめのR&Bな感じで、Princeっぽいところも少々。何よりLizzoのド迫力のVocalが最大の魅力。
Rapperかと思ってたが、逆にVocalが多め。自分を愛そうというメッセージとポジティブネスに満ちているので、聴いていて気持ちが良い。是非ライブを見てみたい人のうちの一人である。
Little Simz / Grey Area
ナイジェリア人を両親に持つUKのFemale Rapper, Littel Simzの3rdアルバム。初のオリジナル・スタジオ・アルバムでもあり、自身のIndyレーベルからのリリースとなる。
生バンドによるTrackは音数少な目で、低体温気味で抑揚の少ないLittle SimzのスキルフルなRapがのっかっているが、適度にVocalが入り、曲調やテンポも様々なので、聴いていて飽きない。
全体のトーンはクールで内省的で陰のある感じがカッコ良い。
Freddie Gibbs & Madlib / Bandana
MadlibとFreddie Gibbsによるデュオ作。5年りの2作目で、前作同様、高評価を得ているが、今回はメジャーからのリリースとなる。(Freddieにとっては、これが初とのこと)。モヤさまで聞き覚えのあるカタカナ日本語のナレーションが2か所にはいってることにビックリしたが、これはHoyaのVoiceTextというアプリによるものらしい。そんなコミカルなところはあるが、70年代のブラックスプロイテーション映画を意識しているとのことで、Lyricなどは社会不満をあらわしてコンシャスな印象。Trackもシリアスなトーンは残しつつ、ただメローなものも多数で聴きやすい。全てiPadで作ったというBeatはMadlib, MCはFrddieという役割は変わらず、Freddieの太くて男らしいRapが印象に残る。
No.6
Rapsody / Eve
Rapsodyの2年振り3作目。前2作がGrammyにノミネートされ、実力は折り紙付き。今作は彼女のヒーローである黒人女性たちにInspireされた作品で、曲ごとにArtist, 活動家から2Pacのお母さんまでと幅広い人々の名前が付けられいる。
Lyricも当然女性に視点を当てていて、コンセプチャルかつコンシャスな大作と言ってよい。Producer陣は前作と変わらずで、Trackは前作路線のメロウなソウルや Jazzyな曲から、ストレートなHip-Hop,変化球的な作品とバラエティーの富んでいて、サンプリングも効果的。
Guest陣(なんとD’angeloも参加)も様々。ちなみにalbumタイトルは⑭のGuestのQueen Latifahに相談して決めたらしい。きりっとしたCDジャケットのお顔も素敵です。
Jamila Woods / Legacy! Legacy!
デビュー作が高評価だったJamila Woodsの3年振り2作目。CDタイトルから、オールドソウルベースの作品かと思ってしまったが、そんなことはなくて、曲名から判るように過去の偉人への敬意を唄にしたコンセプトアルバムである。対象はミュージシャンだけでなく、画家。作家、詩人、女優と多岐にわたる。
全体のトーンは前作同様ゆったりとしたオーガニックな感じで、静謐で、ややジャジーなネオソウルというところ。
Jamilaの暖かく柔らかい声が心地よい。前作、参加していたシカゴ勢のGuestは無しで、助けが無くても大丈夫という自信を得たのかと思う。
Ariana Grande / Thank U, Next
前作からわずか5カ月でのリリースとなったAriana Grandeの5作目。2週間で制作したとのことだが、作り急いだ感じは一切なく、前作同様のクオリティを示している。
Producer陣をあまり入れ替えず、Pop Wanselが加わったぐらいだが、その分、ゲスト参加は無い。
元カレ達に捧げた表題曲を含め、Upな曲からスローと幅広く、Pop, R&B, Hip-Hopを曲調も様々。まさに現在の王道Popで、勢いがあるというのはこのことだろうと思う。
JPEGMAFIA / All My Heros Are CornBalls
NY生まれでジャマイカ人の両親を持つBoltimore出身のRapper、JPEGMAFIAの2019年秋のアルバム。空軍除隊のあと、日本でも生活してたらしく、異色な経験を持っているが、
この辺りは作風とは関係なさそう。本人Produce、Song Writingによる、Lo-FiでエクスペリメンタルなHip-Hop作で、どこの流派にも属さないユニークな作品になっている。
効果音や会話を多用したゆるめのRapがメインであるが、メロウな唄物やアンビエントなところもあったりして、つかみどころがない。短めの曲を気の向くままに繋いだ感じの、ある意味、今を現わしているalbumだ。
Michael Kiwanuka / Kiwanuka
Michael Kiwanukaの3年振り、3作目。デビュー以来、ベースとなるのは、朴訥した語り口のフォーキー・ソウルであり、ミディアム~スローなロック。これに前作から引き続きの全面ProduceとなるDanger MouseとInfloが、Hip-HopやJazzを隠し味に、同じくストリングも効果的に使って、広がりのある音に仕上げている。
懐かしい感じのメロディも耳に心地よい。タイトルにあるように、Lyricのほうは、内省的に自身を見つめなおすようなものになっている。