2021 Best 50 Albums
2021 Black Music Best 50 Albums by planet.ky
2021 年(ほぼ)リリースのブラックミュージック(R&B, Hip-Hop など) アルバム ベスト 50 です。 ランキングは当サイト独自です。
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Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert
前作が高評価で、メジャーな存在となったLittle Simzの2年ぶりの4thアルバム。その前作に引き続き、Saultより、InfroがProducerとして参加し、今回は全曲Produceしている。
いままでの路線を踏襲しつつもスケールが二回りくらい大きく、豊潤になった印象で、Hip-Hop, Soul, Funkをベースに、荘厳なオーケストラや、ElectricやAfroにと、振り幅は相当に広い。
また、すべてのTrackがキャッチーでカッコ良く、それだけで楽しめる。Infroの才能は相当なレベルだと思う。
Little SimzのRapは、基本、低体温で、ただ数曲では力強さも魅せている。また、これもSaultより、2ndのリリースが迫っているCleo SolがGuest参加し、透明感のあるVocalを披露している。
対照的に、Album TitleにあるようにLyricは内向的/内省的で、その対比も興味深い。
Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost
前作ではGrammyも獲得し、現代Hip-Hopにおける最重要人物の一人となっているTyler, The Creatorの2年振り6作目。その高評価だった前作と、全体感はそうは変わらないが、唄からRapへと軸足を戻したのが最大の特徴となっている。
また、DJ Dramaが各所で煽りを入れていて、彼のMix TapeシリーズのGangsta Grillzへのオマージュであることも判る。
Trackはホラーな部分も少し残っているが、全般的にはメローで、Fluteを使った曲などノスタルジックなものが多く、リラックスした印象を受ける。Lyricでは、これまでと打って変わって、成功した自分をテーマにした曲が多い。
Rapのほうは撚れたというか惚けたというかで、こちらは今まで通りだ。
No.3
Lil Nas X / Montero
2018年リリースのCountry Rap曲”Old Town Road”をヒットさせたLil Nas Xのデビューアルバム。一発屋と見られていたが、そうではなく、当作も大ヒットし、Grammy主要部門にもノミネートされている。
2019年にジェンダーレスであることをカミングアウトし、物議を醸したが、Princeっぽいジャケットも含め、特にLyric面で、そちら方面の世界観を強く押し出した作品になっている。また、自身を曝け出すという意味か、アルバムタイトルの本名からとられている。Elton JohnやMiley CyrusをGuestに迎えたのもその一環であろう。
ただ、曲自体は流麗でメロディアスな、聴き易いものが多く、これだけで十分に魅力的。Trackは小賢しい捻りがなく、唄物のそれに近くて、好感が持てる。Lil Nas XのRapは唄うようなフローであったり、普通に唄ってたりとストレートなRapは無し。⑮のMiley Cyrusとのデュオなんかは、切なさが染みてくる。
Jazmine Sullivan / Heaux Tales
Jazmine Sullivanの約6年ぶりの4作目。ダイエットに成功したそうで、ジャケットを見ると顔がシュッとして、若返ったように思える。(といっても、まだ33歳)。
そんなジャケットからは手抜き感を感じるが、内容も、良い意味で抜きがあり、敢えて最小限の伴奏で最大限のグルーブを醸し出している。Guiterが効果的で、生楽器の強みを活かしたゆったりとしたTrackに、Jazmineの力強いVocalが何とも心地よく、癖になる。
出自であるGospelの影響も唄いまわしやコーラスで強く感じることができる。14曲中6曲はInterrude的な女性によるモノローグになっていて、自己肯定のようなことが語られており、全体としてはコンセプチャルな作品になっている。
ただ音楽面だけでもクオリティは相当高いと思うし、個人的には、かなりハマってます。
Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic
人気、実力とも折り紙付きのBruno Mars, Anderson .Paakによる、何とも豪華なユニット、Silk Sonicによる1stアルバム。Bruno Marsの前作”24K Magic”の流れを組んでいるが、ただし、今回は時代をもう少し遡って、70年代ソウルへのオマージュ感溢れる作品になっている。ハッピーでスイートなR&B作品であり、ストリングスやブラスがはいったTrackはゴージャスで煌びやか。メロディもキャッチーで馴染みやすい。
ユニット作ではあるが、Produce面含めて、全般的にBruno Mars色が強く、Anderson .PaakらしいHip-Hop色は皆無でVocalに専念している。また、Bootsy Collinsが数曲において声で参加しており、花を添えている。
コロナ禍の陰鬱とした空気をぶっ飛ばそうという気概が感じられる作品。同じような曲が並ぶが、30分強とコンパクトにまとめられているので、一気に聴きとおせる。
No.6
Adele / 30
Adeleの5年ぶりの4作目。発売後3日間で2021年最大のヒットとなり、変わらぬ実力と人気を示している。
前作リリース後、離婚を経験したこともあり、内面と向き合い、自己救済していく過程や、息子との親子愛がLyricや歌唱の込められており、心にダイレクトに響いてくる。
サウンド面は今までのスタイルをベースに変化も加わっていて、一番ソウル寄りになっており、3曲でゴスペルっぽいコーラスが入ってくる。Producerは、おなじみの面々に加え、SaultのInfroが終盤3曲を担当していて、Adeleの空気感を維持しつつ、サウンド面の変化に一役買っている。
歌唱面は成熟して穏やかな方向に向かいつつ、⑪などでは声を荒げて、感情を露わにしている。
J. Cole / The Off-season
今や、Top Rapperの一人となったJ. Coleの3年ぶりとなる6作目。タイトルはプロスポーツなど使われるOff-Seasonのことで、休みをとって本番に備えて研ぎ澄ますみたいな意味のようだ。なので、過去の作品とは様相が違っていて、まずは外部ProducerやGuestを多く迎えている点があり、おかげで以前よりOpenな印象を受ける。
LyricもStory Tellingな作風から、言葉遊びや高度なライムの組み立てに比重を移している。全体的にTrackは手堅いつくりのゆるめな感触で、メロウなものが多数。
Rapでは、さらに磨かれた高度なスキルを披露しており、余裕をも感じさせる。派手さは無いが、プロ好み、ディープなファン好みの作品である。
Vince Staples / Vince Staples
Vince Staplesの4年振りの4作目。長めのインターバルになってはいるが前作”FM!”と対になる作品らしく、同じく22分強の小品になっている。同様にメインプロデューサーはKenny Beatsで今回は全曲プロデュースを担当している。
全曲、地味目でゆったりとした、ややダウナーなTrackにVinceのよれ気味の唄うようなフローがのっかっていて、これを切れ目なく繋いでいるので、全部で一曲みたいに感じられる作品になっている。Westside感はあまりなくて、代わりに温かみを感じられるTrackも少なくない。
Lyricはアルバムタイトルにあるようの、本人の半生を語った内省的でコンシャスなものになっている。
Mach-Hommy / Pray For Haiti
New Jersey出身、ハイチ系アメリカ人のRapper, Mach-Hommyの2021年春のアルバム。自身とWestside Gunn, Conway the Machineによって設立されたレーベルからのリリースとなり、そのレーベルメートのWestside GunnがExective Producerにおさまっている。
2000年代から活動してはいたが、当作で初めて日の目を見た人でもある。全体感として、イーストコーストらしいコアなHip-Hopで、①の不穏なトーンで全体をしつつも、後半にかけて、メローであったり、哀愁感があったり様々。Mach-HommyのRapは低めで押しが強く硬派な印象で、対照的にWestside Gunnが高めの声で数曲でGuest参加している。
④で、“つまようじをさしたりんごを・・“というサンプリングがはいるが、中山恵美子さんという70-80年代に活躍された歌手の曲であり、どうやってこの曲を見つけたのか気になるところだ。
Summer Walker / Still Over It
Summer Walker、2年ぶりの2nd。デビュー作の好調さを維持していてチャート1位を獲得し、高評価も得ている。PhysicalのCDジェケットの写真で抱えている自身のお子さんの父親であるLondon On Da Trackが今作でも多くの曲をProducer参加しているが、破局してしまってるとのことで、内省的であったり、失恋を唄った曲が多いようだ。
前作同様、ミディアム~スローのメロディアスな曲で占められており、Trackもオーソドックスなものがほとんど。
Cardi BやAri Lennoxなど、筆者的には同類の女性VoをGuestに迎えているのが面白い。他にも豪華なGuest陣を迎えているが、あまり目立ってなくて、主人公はあくまでもSummer Walkerの唄であり、しっとりと表現力豊かに唄いあげている。