2022 Best 50 Albums
2022 Black Music Best 50 Albums by planet.ky
2022 年(ほぼ)リリースのブラックミュージック(R&B, Hip-Hop など) アルバム ベスト 50 です。 ランキングは当サイト独自です。
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Beyoncé / Renaissance
ライブ作品を挟んで、オリジナルアルバムとしては、なんと6年ぶりとなるBeyonceの7作目。その不在感を埋めるべく16曲で1時間を超える大作となっている。(ちなみに3部作の一つ目らしい)。
良い作品をリリースするだけでなく、話題をふりまける稀有な存在ではあるが、当作ではハウスにがっつり取り組んでいるのが最大の話題であり、Grammyの主要部門だけでなく、Best Dance/Electronicの2部門にもノミネートされている。
4つ打ちのハウスにディスコとアップなビートが中心となり、パーティ的で開放感のあるサウンドが特徴的。クラブっぽく曲間を無くして、シームレスに繋がっていく。ただ、Sydとの⑧などは癒し系っぽく、アルバム中間で一休みとなっている。
Produer陣も一新し、そっち系の人たちが多くなっているが、The-DreamやRaphael SaadiqなどによってR&Bフレイバーも微かに感じられる。LyricではLGBTQによりそうところも感じられ、このへんもBeyoncéらしいところだ。
Kendrick Lamar / Mr. Morale & The Big Steppers
Kendrick Lamarの5年振り(1曲目で1885日とRapしている。)となる5作目。その間に2児の父になったKendrickであるが、アルバムのトーンへの影響は無さそうだ。5年間スランプだったらしく、去年夏に活動再開となり、傑作リリースにいたっている。
アルバムは2部構成になってるが、タイトルの順とは逆で、前半9曲がBig Steppers(成り上がり)となり、成功した自分の苦悩や浮気事件、キャンセルカルチャーなどをRapしている。後半がMr. Morale(士気の高い人)で、トランスジェンダーした親族、幼少期のトラウマ、世間の期待と自身とのギャップなどについて、ありのままに語っている。
Trackはお馴染みのSounwave中心の製作陣によるもので、音数少な目でPianoを効果的に使った抑揚抑えめのものが印象的。他にもストレートなHip-Hopやメローなものなど様々となっている。
No.3
SZA / SOS
高評価を得たデビュー作で一定のポジションを得たSZAのなんと5年ぶりの2作目。客演仕事が多く、あまり不在感はなかったが、長いインターバルを埋めるかのように23曲、70分弱の大作になっている。デビュー作後すぐに次作の噂があったが、レコード会社との折り合いなどあって、間隔が空いたようだ。また、そこにも関係ありそうだが、海上で1人助けを待つ姿がアルバムジャケットに描かれている。前作のパーソナルでオーガニックな側面を残しつつ、全体的には、音の広がりを感じる作品になっており、R&B, Hip-Hopだけでなく、Gospel, Rock, Folk, Countryなど幅広い作風になっている。曲数が多い分、Producerも多めになっていて、バラエティに富んだ作品でもる。30歳を越えたSZAであるが、歌声は、まだまだ、みずみすしく、少女らしさを残しつつ、メロディアスな曲での穏やかな歌唱が印象に残る。
Steve Lacy / Gemini Rights
前作のソロデビュー作が好評だったSteve Lacyの3年ぶりとなる2nd。ローファイなところは残しつつ、多様で広がりを感じる構成となり、R&B/Soulと言えるのは、かろうじて⑩くらい。Indy Rockが基調となり、Bosa Nova曲(③)もあったりしている。
また、前半にBeatlesっぽい曲が数曲あって、アルバムのトーンを決めている。キャッチーで軽快なアップから、しみじみとしたスローまでと曲調も様々。外部Producerの力を借りつつ、Steve本人のProduce力にも一層、磨きがかかっている。
なお、3曲で母親と、アーティストの妹がコーラスで参加している。
Pusha T / It’s Almost Dry
4年ぶりとなるPusha-Tの4thアルバム。既にチャート1位を獲得している。兄とのDuo、Clipse(ラスト曲で再結成)をフックアップしたNeptuneのPharrellと、Solo活動後をバックアップするKanye Westがほぼ半分づつProduceしており、⑦では二人ともCreditされている。
Trackは全体的にはストレートな感じで、Pharrellプロデュース曲は、Popさは抑え気味であり、いつもよりハード寄り。Kanyeのプロデュース曲で特に③⑤⑦あたりは、初期のKanyeらしさが戻ってきたようで好感が持てる。
Pusha TのRapは引き続き力強い。リリースが少ないのでもう少し若いのかと思っていたが、改めてBIOを見返してみると既に40歳代半ばであり、なるほどの迫力と自信が感じられる。
Sudan Archives / Natural Brown Prom Queen
デビューアルバムである前作で高評価を得たSudan Archivesの3年ぶりとなる2nd。その前作からの神秘的でエキゾチックなところをベースにしつつ、特に冒頭の2曲などを象徴にアフロ色が強い傾向にある。それ以外にもPopな曲や、逆にクールな曲などジャンル横断的でバラエティの富んだ構成になっている。それもそのはず、制作が変わっていて、Sudan Archivesが作ったデモテープをマネージャーのBen Dickyが、様々なProduceに送って色付けしたもらったものを、再度、取捨選択、ミックスさせて完成させるというプロセスを踏んでいる。結果として、多様ではあるが、トーンが統一された作品に仕上がっている。
Lyricのほうはパーソナルで内省的なものが多いようだ。
No.7
The Weeknd / Dawn FM
The Weekndの2年弱ぶりのアルバム。世相にマッチして好評だった前作の勢いを切らさずに、適度なインターバルでのリリースとなっている。タイトルにあるように架空のFM局”Dawn FM”による番組風になっていて、曲間をActorのJim Careyなどのナレーションによって、切れ目なく繋ぐ構成になっている。
制作陣は前作からMetro Boominが抜けたくらいで、ほぼ変わらず、80年代的なシンセ全開のElectro Popが多くを占めている。
Blue Eyed Soulっぽい曲では、黒人のWeekndから、白人のほうに寄せているところがユニークで、黒人音楽の系譜とは別のところから現れた人ならではの自由さな気がする。
高音Vocalでのさわやかな曲も少なくないが、特に、シングルカットされた流麗なスロー曲の⑥では亜蘭知子さんのMidnight Pretendorsのループが一曲通してサンプリングされており、日本人としては気になるところでもある。暗闇の先にDawn(夜明け)が来るよという今の時代への愛とメッセージを込めた作品でもある。
Vince Staples / Ramona Park Broke My Heart
昨年に引き続きのリリースとなるVince Staplesの5作目。タイトルにあるRamona Parkとは、Vinceの生まれ育ったLong Beachにある公園のことで、これからも判るように自身の半生や思い出などを描いたPersonalな作品となっており、この辺は前作に近い。ただ、前々作、前作では、Kenny Beatsが制作をほぼ担っていたが、当作では多くのPeoducer陣が参加している。
サウンドは、メランコリックでエモーショナルなトーンで統一されており、メロディックで美しいトラックも多く、ちょっと感傷的な気分にさせる。
Danger Mouse & Black Thought / Cheat Codes
Producer / DJのDanger MouseとThe Roots所属のRapper, Black Thoughtのコラボレーション作。前者が全曲Producer, 後者がメインMCを担当している。両社とも東海岸出身で長く活動しているだけあって、イーストコーストらしい、コアでストレートなHip-Hopが展開されている。
Danger MouseのProduceは、最近では珍しく、割と硬派で、効果的なサンプリングが特徴的であり、Black Thoughtの切れの良いRapとの相性も良い。Rakewon, Run The Jewelsなど、こちらも硬派なゲストが並ぶ中、2020年に他界したMF Doomとの⑩には哀愁を感じてしまうし、⑦ではなんとInfloも控えめに参加している。
Ari Lennox / age/sex/location
J.Cole率いるDreamvilleの歌姫、Ari Lennoxの3年ぶりとなる2nd。レーベルの勢いそのままに前作以上の評価を得ている。
引き続きのEliteに加え、Kelvin Wootenがメインプロデューサーとなり、さらにOrganaizd NoizeやJermaine Dupri も加わって、90年代ソウルにネオソウルを塗したようなオーソドックスかつメロウでスゥィートなサウンドを届けてくれている。
曲調はミディアム〰スローが中心となり、Ari Lennoxの柔らかい歌声は、まさにとろけそうな感じで耳に心地よい。