アフロフューチャリズム ブラック・カルチャーと未来の想像力 / 著者 Ytasha L. Womack
Book Review
アフロフューチャリズム ブラック・カルチャーと未来の想像力
著者
Ytasha L. Womack
訳
押野素子
出版社
株式会社フィルムアート社
ページ数 / サイズ
259ページ / 18.8 x 13.1 x 1.9 cm
発売日
2022/8/20
定価
2400円(税抜き)
- 黒人文化のミッシング・ピース!!
サン・ラー、オクテイヴィア・E・バトラー、ジョージ・クリントン、マイルス・デイヴィス、ジャ ネール・モネイ、サミュエル・R・ディレイニー、ニヨータ・ウフーラ(「スター・トレック」)、ブラックパンサー(マーベル)……
彼/彼女たちが夢見た宇宙、切り開いた未来とはなにか?
文学、音楽、映画、美術、コミックス、あらゆる表現を横断し、フェミニズム、社会運動を駆り立てたSF的想像力とテクノロジーの精神史 -
アフロフューチャリズムという言葉考え出した人は文化批評家のマーク・デリーとのことで、1994年の論考で ブラック・アメリカにおけるテクノカルチャーのトレンドを命名したと本書に書かれている。 本書を読んでみると、テクノロジー、宇宙などのSF的要素、未来志向と融合した黒人文化を示しているようだ。 音楽に限らず、文学、映画、美術、コミックスまでを含んだ、まさに文化横断的な考え方と言える。
そのアフロフューチャリズムを扱った書籍ということになるが、アフロフューチャリズムとは?に始まり、 著名な思想家や批評家の考え方、アフロフューチャリズム的思想を持った音楽、文学、映画、美術、コミックスなど が、幅広く取り上げられている。あまり一点を深堀するのではなく、網羅的に扱っており、全体的な起承転結の ようなものは特に無いのが特徴的である。
なので、音楽を中心とした記述に、多くを割かれているわけではないので、肩透かし的なところはあるが、そこは仕方ない。 音楽としては、特に、サン・ラー、ジョージ・クリントン、リー・スクラッチ・ペリーが重要人物として描かれており、 その先駆者としてサン・ラーがとりあげられている。
ジョージ・クリントンのマザーシップについては、ドゴン族の創生論を彷彿させるとされているが、 個人的には、そんな深い意味は無くて、ビジネス的、商業的側面が強いと思っている。
他にも、ジミ・ヘンドリックス、ジャネル・モネイ、ミッシー・エリオット、マイケル・ジャクソンなど多数が取り上げられているが、 ジャネル・モネイなどは特にアフロフューチャリズムとの親和性は高そうで、本書には間に合ってないが、最新作、THE AGE OF PLEASUREにも 引き継がれている。 黒人音楽は、Hip-Hopを中心に早くからテクノロジーを取り入れていたし、宇宙的要素を数多く取り入れてきたが、 もしかしたら、思想的基盤にアフロフューチャリズムが潜んでいたのかもしれない。
全体を通しては、アフロフューチャリズムの外環がなんとなく判ったかなというところで、音楽だけにフォーカスした 著作も期待したくなった。