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オルタナティブR&Bディスクガイド / 監修 川口真紀, つやちゃん

Book Review

オルタナティブR&Bディスクガイド

フランク・オーシャン、ソランジュ、SZAから広がる新潮流

オルタナティブR&Bディスクガイド / 監修 川口真紀, つやちゃん

監修

川口真紀, つやちゃん



出版社

DU Books


ページ数 / サイズ

205ページ / 21 x 15 x 1.5 cm


発売日

2024/3/29


定価

2500円(税抜き)

- フランク・オーシャン、ソランジュ、SZAから広がる新潮流 -

- あたらしい歌、百花繚乱 -

本書冒頭にコンセプトとして、”オルタナティブR&Bを中心に、同時代の刺激的な作品を紹介する”とあり、カバーする範囲はちょっと 広めではある。また、オルタナティブR&Bのざっくりとした定義として、“浮遊感のあるシンセ音を基調とした、深遠でアンビエントなサウンド”、 “トラップ的なドラム”、“シャウター系とは対照的な、繊細で官能的、時にフィルターやリヴァーブがほど施されたヴォーカル”、“主に内省的な歌詞” とあり、この辺を選盤のゆるい基準としたディスクガイドとなっている。 ちなみにグラミー賞では”Progressive R&B”という言い方をしているが、ほぼ同義語と思ってよいであろう。


それで内容はというと、US/UKを中心として、萌芽期(2009-2015)、成熟期(20016-2018)、百花繚乱(2019-2023)という、 年代別構成となっている。何しろこういった音楽がメジャーになりはじめたのが最近なので、2009年からと比較的直近の作品に絞られることになる。 そのため、多くの人にとっては同時代的に聴いた作品を振り返ることになる。 また、韓国編、日本編もあるのが特徴的。ただ、自分にとっては疎いところなので、知らないアーティストばかりだった。個人的には、正直、 いらなかったかな。


ガイドは、各年代ごとに、その年代の特徴、代表する10作品前後についてのレビュー(各1枚/1ページ)、その他の作品のレビュー(4枚/1ページ)で 構成されている。代表する作品については文句なしで、Frank Oceanが3枚、The Weeknd, Kelela, Solange, Beyoncé, Jhené Aikoが2枚、選ばれている。 その中でもJhené Aikoや加えてTinasheが重要アーティストとして描かれているのが意外だった。ただ、最重要としてはもちろん、Frank Oceanを位置づけている。 また、Drake、Summer Walker、PJ Mortonなど、ジャンル的にギリギリな人の作品も選ばれており、ジャンルの境界の曖昧さや時代がボーダーレスになってきたことが判るし、 敢えて明確にする意味も無い気がする。さらに選ばれたアーティストも見ると、ジェンダーレスというキーワードも通奏低音的にながれていると思う。 レビュー枚数は約400枚なので、超メジャーな作品以外もカバーされているが、索引が無いのが残念だった。


そのレビュー自体の記述は真っ当なものが多く、こういったガイドの特徴になるが、振り返っての価値みたいな当時気づかなかったことも 書かれているので、読んでみる意義はあると思う。 その他にも章の間に、いくつかの興味深いエッセイが載せられていて、Noa “40” Shebib, Frank Ocean, SZAなどがとりあげられていて、 こちらも読みごたえがあった。
全体を通すと、あらためてAlternative R&Bが明確に主流になってることが再認識され、いずれ、Alternative R&Bというジャンルも 無くなるのかなと思った。