ファンクはつらいよ ジョージ・クリントン自伝 バーバーショップからマザーシップまで旅した男の回顧録 / 著者 George Clinton, Ben Greenman
Book Review
ファンクはつらいよ ジョージ・クリントン自伝 バーバーショップからマザーシップまで旅した男の回顧録
著者
George Clinton, Ben Greenman
訳者
押野素子
監修・解説
丸谷久兵衛
出版社
DU Books
ページ数 / サイズ
485ページ / 19.5 x 14 x 3.8 cm
発売日
2016/7/22
定価
3000円(税抜き)
- ジョージ・クリントン・サーガ : 床屋から銀河系の大スターになったジョージ・クリントンの立身出世物語 -
ご存じ、ファンクの巨人にして、生き字引であるジョージ・クリントンの自伝。バーバーショップからドゥーワップシンガーを 経て、Pファンク軍団を率いて成功し、今に至るまでが描かれている。 The New Yorkerの編集者にして小説家のベン・グリーンマンの力を借りているが、自伝なので一人称で書かれている。
特に1978年のデビュー当時(なんと37歳)から、活発に活動していた1980年代までの出来事が、どこまでが事実か判らないが、 赤裸々に描かれている。 長い間、ドラッグ依存症であり、ドラッグ(クラックなど)の入手や吸引にまつわる出来事も、詳しく書かれていて、 これ、法的に大丈夫なのかな?と思ったりする。
同時代的にジョージ・クリントンを追いかけては無かったので、下記のような多くのことを知ることができて、 それだけでも面白かった。
・Parliament, Funkadelicだけでなく、Bootsy’s Rubber Bandなど身内をも有機的に連携・融合させながら活動してたこと。
・スライ・ストーンと1年以上、一緒に暮らしていて、同じドラッグ依存症となり、スライがシーンよりフェイドアウトしていくところを 間近で見てきたこと。
・マザーシップやスター・チャイルド、ドクター・ファンケンシュタインなどのキャラクターは、半分は思い付きだが、 半分は商業的成功を狙った戦略的なものだったこと。
・交友関係が、めちゃくちゃ広く、プリンス、ケンドリック・ラマーなどの音楽的志向の近いひとたちだけでなく、Primal Screamなど 他分野のアーティストとの交流も多かったこと。
・Doors, Cream, Beatlesなどロックからの影響を受けていること。
・著作権や楽曲所有権で、悪徳マネージャーに搾取されていて、長い間、問題を抱えていたが、ドラッグ依存症のせいで、 頭が回らなかったこと。(その後、権利問題も、依存症も解決したとのこと)
もちろん、Bernie Warrell, Bootsy Collins, Eddie Hazel, Garry Shider, Rogerなどおなじみの面々は頻出するし、 書ききれないほどのSoul, R&B, Funkアーティストが登場するので、黒人音楽の裏歴史を知るという観点でも、 大変興味深かった。
写真も32ページにわたって、掲載されているので、具体的イメージを湧かせながら、文章を読むことができた。