ギャングスタ・ラップ ディスクガイド / 編著 小渕 晃
Book Review
ギャングスタ・ラップ ディスクガイド
ヒット・定番 600曲・600枚
- lyrics focus on thug and gangsta life -
タイトル通りのギャングスタラップのディスクガイド。だい ぶ、狭いところを攻めてきたなとおもったが、ギャングスタラップとはサグやギャングの暮らし、日常についてのリリックを聴かせるものという考え方に基づいていて、 広義のギャングスタラップを範囲にしており、例えば、Nas, Jay-Z, Travis Scott, Lil’Wayneなどのアルバムも若干数、掲載されている。
ウェストサイド、サウス、ミッドサウス、イーストコーストの分類で章立てされているが、初期より、この分野で隆盛を極めるウエストサイド(6割弱)、サウス(3割)に多くの紙面が割かれている。 編著が元BMR編集長の小渕 晃氏ということで、そう言えば、BMRにもウエスト、サウス偏重の時代があったなと思い出した。 逆にイーストサイドにフォーカスしたガイドも見てみたいものだ。
良くあるディスクガイドでは、リリース日順やアーティスト名のアルファベット順で並んでいることが多く、これでは流れがぶつ切りになってしまうが、 当ガイドでは、メインアーティストとその周辺の人脈のひとたちやスタイルによって、ゆるーく分類し、アルバムを並べてくれているので、当時のシーンや界隈の動静が良く判り、 ある意味、読み物としての価値もある。
範囲が狭いだけに、内容はディープで、主要なアーティストについては、代表作だけではなく、多くのアルバムを紹介しており、例えばIce Cubeは共作含めて、14枚掲載れている(しかもNWAなどのグループ作を除いてである)。 他にも自分の知らなかった作品多数で勉強になる。
また、“おわりに”では、”ギャングスタは町の暮らしにおいて、ちょっと背伸びして、見栄を張って生きる者たちの音楽。流行に敏感で、シャレを重んる者たちによるシティ・ミュージック”としており、 なるほど、世の若者のハートをつかんで離さない本質はこれだったのかと、改めて、認識させられた。