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インディラップ・アーカイヴ / Genaktion

Book Review

インディラップ・アーカイヴ

もうひとつのヒップホップ史 : 1991-2020

インディラップ・アーカイヴ / Genaktion

著者

Genaktion


出版社

DU Books


ページ数 / サイズ

232ページ / 15 x 1.6 x 21 cm


発売日

2020/11/27


定価

2300円(税抜き)

  • 濃密なラップアルバム500枚 -


タイトルのようにインディ・レーベルからリリースされたラップアルバムのディスクガイド本。 ラップというジャンルが生まれた当初はすべてインディだったわけだが、インディとはいえ著名だった作品を選んでいるわけでなく、 あくまでも、商業ラップやメジャーな作品の対極として位置づけられる”インディラップ”をカバーしている。 従って、例えば最近では、Chance The Rapper, Run The Jewelsなどは取り上げられていない。


言ってしまえばマイナーで渋い作品がほとんどである。アルバムは年代順・アルファベット順に並んでいて、 読みはじめは古い年代なので知らない作品ばかりだったが、予想外に本の終盤の近年になっても、その感覚は変わらなかった。


本は1991-1996(序章), 1997-2004(最盛期), 2005-2006(過渡期), 2007-2010(停滞期), 2011-2016(復活期), 2017-2020(次の時代へ)の 6章構成になっているが、当然ながら、1997-2004(最盛期)に多くの紙面が割かれている。 また、作品をBattle, Concious, Party, Hard Core, Unique, Mixed Styleのサブジャンルでタグ付けしてくれているのが有難く、 インディラップの性格上、PartyとMixed Styleはほとんど見かけないが、他はほぼ均等になっていると思われる。


また、同じ理由でサウンドよりLyricを重視した解説になっている。当然ながら、メジャーでありがちな、金持ち自慢やBling Blingな Lyricは皆無であり、メッセージ性のつよいConciousなもの、セルフボースト、Story Tellingに優れたものが多くなっている。


筆者のGenaktionさんは、ラプティビスト、ヒップホップリサーチャーという肩書であり、その知識量、情報量は半端なく、 よく、これだけの内容を一人で書けたものだと感心するし、改めてこのジャンルの奥深さを再認識させられる。


本編以外にも、各章のおわりに、ライムやその構造の変化について、具体例をもとにした技術的解説が載っており、これはこれで大変にためになるコンテンツである。 また、12インチシングルのガイドも42枚分、掲載されている。


全体を通して読むとインディラップから見たHip-Hopの趨勢や、音楽の聴き方やこれをとりまくメディアや環境やの変化からの影響がわかってきて、 Hip-Hopに対する見識が少し広がった気がしてくる。