シカゴ・ソウルはどう世界を変えたのか / 著者 アーロン・コーエン
Book Review
シカゴ・ソウルはどう世界を変えたのか
Move On Up
著者
アーロン・コーエン
訳者
夏目大
出版社
株式会社 亜紀書房
ページ数 / サイズ
464ページ / 19.5 x 13.8 x 3.1 cm
発売日
2024/1/5
定価
3500円(税抜き)
- 黒人文化運動と音楽ビジネスの変革史 -
元ダウンビート誌の編集者で、カレッジでも教鞭をとるアーロン・コーエンの著作で、表題通り、50年代より70年代のシガゴにおける黒人音楽をを取り巻く社会状況を、 多くの当事者インタビューと資料に基づいて、時系列的・客観的にまとめた作品。
南部より多くの黒人労働者が流入し、一大コミュニティが形成されたシカゴにおけるソウルミュージックシーンやその隆盛や変遷、様々なアーティストの台頭を史実にもとづき、主観を排して丁寧に描いている。
さらには、シカゴにおいて地域ごとに形成されたコミュニティの特性(例えば、住宅事情)やそこでライブハウスが果たした役割、音楽ビジネスとここにおいて黒人が主体的、主導的に活動できていたこと、 ソウルミュージック隆盛に一役買ったラジオ局の動静、音楽ビジネス側からラジオ局への働きかけなど、音楽そのものだけではなく、これを取り巻くものについても比重を置き詳しく描かれている。
読んでみると、人種差別的な事柄についての記述もあるが、比較的自由かつ主体的に、黒人が音楽やこれにまつわるビジネスを続けてこれたことが判る。 また、公民権活動等についても、割とあっさりとした描き方で、音楽との強い結びつきにはあまり触れていない。
本自体の主旨として音楽そのものを深堀したものではなく、それは仕方無いが、カーティス・メイフィールド、ジェリー・バトラー、ダニー・ハサウェイ、アース・ウィンド&ファイアー、 ミニー・リパートン、チャカ・カーン、テリー・キャリアーあたりは頻繁に触れられているので、このへんがソウルファンのお楽しみになる。