2023 Best 50 Albums
2023 Black Music Best 50 Albums by planet.ky
2023 年(ほぼ)リリースのブラックミュージック(R&B, Hip-Hop など) アルバム ベスト 50 です。 ランキングは当サイト独自です。
画像クリックでレビューページへ。
Victoria Monét / Jaguar II
EPだった前作の続編となるVictoria Monétの今回はフルアルバム。メジャーからのデビューアルバムでもある。引き続きメインでのProduceはD’Mileが担当し、70年代っぽいところも残す現代的で手堅いR&B作に仕上がっている。
Trackの構成はアップ~ミディアム~スローとバランス良く、穏やかで懐かしい感じの曲も多いので、とても聴き易い。唄は抑え気味で、声がやわらかく透明感があるので、一層、心地よく感じる。
Guestのほうは、お馴染みLucky Dayeとの相性の良さもさることながら、Buju BantonやなんとEW&Fと意外なところからの参加も面白い。
No.2
Noname / Sundial
前作はセルフリリースだったが、今度はレーベルからのリリースとなるNonameの2作目。サウンドは、バンドによるJazz色が一層強く基調となっている。加えて、Latin, Neo Soul, Trap, Funkなども塗されており、Gospelっぽいコーラスも2曲ほど。
参加制作陣多数ではあるが、統一感は保たれていて、全体的な印象はスムースでムーディーなものとなっている。これにNonameの穏やかに諭すようなSpoken WordっぽいRapや唄がのっかるところは、今まで通り。ただ、そんなTrackの半面、Lyricは社会性を帯びた物が多いのが特徴的。
同郷のSaba, Commonなどのサポートもあり、また、Jay Electronicaによる落ち着いたRapとの相性も良い。
No.3
Sampha / Lahai
Samphaの約6年半ぶりの2ndアルバム。デビュー作で成功したにも拘わらず、この間、コロナなどもあって、音楽活動はスローダウンしてたとのことで、勿体ない気もするが、良質な作品で戻ってきてくれた。
タイトルはシェラレオネの祖父の名前であり、自身のミドルネームでもあるとのことだが、特にルーツ志向が強いわけでもなさそうだ。
静謐で抑え気味のゆったりとしたエレクトリックソウルをベースに、UK Grage, Jungleが加わり、Jazz, Hip-Hop, 西アフリカの音楽などもとりいれた独特のサウンドが展開されている。
Produceではスペイン人のEl Guinchoのサポートを得て、Guest陣もLéa Sen, Sheila Maurice-Grey, Yaeji, Morgan Simpson, Ibeyiと多彩でグローバルではあるが、Samphaの作る音楽にパーツ的に組み込まれている感じだ。また、ところどころSpoken Wordや荘厳なコーラスが使われてたりして、Lyricを含め、トータルとしてSpritualな印象を受ける作品だ。
JPEGMAFIA x Danny Brown / Scaring The Hoes
JPEGMAFIAとDanny Brownという、曲者2人による共作。Danny Brownの前作にJPEGMAFIAもゲストとして呼ばれているが、そのへんのつながりからフルアルバム作成にいたったのかもしれない。
全曲、ProduceはJPEGMAFIAのみ、MCはRedveilが客演している1曲を覗いて両人のみというシンプルなCreditになっている。全体の印象は、かなり刺激的で強烈なもので、サンプリング含め、Jazz, Funk, Hip-Hop,ゲーム音楽など様々な要素が、コラージュ的に入れ替わり立ち替わり現れ、音圧高めの曲も多くて、単純に面白く、JPEGMAFIAの才能が爆発している感じである。(しかも全てのビートをThe SP 404というコンパクトサンプラーで作成したとのこと)。
Experimentalではあるが、聴きにくい感じでも無いので、普通に楽しめると思う。
また、マルハニチロやファミコンのCMからのサンプリングや、坂本真綾の”約束はいらない”をループに使った曲など、このへんはJPEGMAFIAに日本在住経験が活かされているのであろう。
No.5
Kelela / Raven
Kelelaのなんと6年ぶりとなるオリジナル2作目。アンビエントで静謐なサウンドは継承しつつ、エレクトリックでハウス色を強め、時にダンサブルで、メロディアスだったりするのが特徴的な作品となっている。
ドイツにわたり、 LSDXOXO, Yo Van Lenz, Florian TM Zeisigといった彼の地のProducerと制作したとのことで、ミニマルなサウンドは独特のものがあり、Kelelaの揺蕩うような透明感のあるVocalと一体化している。
本人は、”社会の中で制度的に抑圧されてきた黒人女性の脆弱性が力に転じたことを象徴するサウンド”と語っているが、鬱屈や苛立ちは感じられず、あくまでも安らかで心が洗われる作品になっている。
Billy Woods and Kenny Segal / Maps
通好みながら、近年の活躍が目覚ましいBilly Woodsが4年ぶりにKenny Segalと組んだアルバム。
Billy Woodsの作品にしては、大分、聴き易く、Criticの評価も高い。Song WritingはBilly Woods、ProduceはKenny Segalという役割分担となっており。また、Guestでは、Armand Hammerのもう一人、ELUCIDやAesop Rockなどが参加している。
全体をややダークなトーンで統一しつつ、MoodyでJazz要素強めのTrackは都会的であり、この上で、Billy Woodsがストーリーテラーぶりを発揮している。
Janelle Monáe / The Age Of Pleasure
前作あたりで女性R&B Vocalの実力トップに上り詰めた感もあるJanelle Monáeの5年ぶり4作目。当作も、クオリティの高さを見せているが、長めにインターバルをとっていることが、好影響になってると思う。
制作は引き続き、Nate “Rocket” Wonder,が中心となり、相性の良さが良くわかるが、アルバムの全体感はガラッと変わっていて、レゲエ/ダンスホールやアフリカ的なリズムの曲が大半を占めており、純粋なR&B曲は無い。そのぶん、アーシーで、US以外の世界まで取り込んでいく意欲が感じられ、それはSean Kutiをはじめとするゲスト陣のセレクションにも現れている。
リズミカルでノリの良いが多数であり、快楽的なLyricも相俟って、コンセプト的には、一味違うパーティーアルバムを目指しているようだ。
Amaarae / Fountain Baby
Ghana系でNY出身のSinger, Amaaraeの2ndアルバム。矛盾のある表現かもしらないが、都会的なアフロ・ポップという感じで、ただ⑩などは全くそれっぽくはなくて、後半はオルタナロックだし、R&Bや時折Latin, Jazz色も加わった曲もあって、曲調は幅広く、じっくり聴くべき曲も多い。
メロディアスに聴かせる曲もあり、Lyricでは、全編、恋愛関係を唄っている。既に29歳ということだが、ころころと可愛らしい声と、こういったTrackとの組み合わせは結構斬新だと思う。
⑦では、うっすらと日本語のSEが聞こえ、ラストでは”こんな曲、どうでもいいんですけど”と言ってるように聞こえる。
Young Fathers / Heavy Heavy
Young Fathersの約5年振りとなる4作目。周りとの交流が少なく、一種独特な作風を保ってきたチームだが、そこは引き続き、維持されている。ただ、Hip-Hop, Grime色は少し薄れて、メンバー2人の出自であるAfrica音楽からの影響が色濃くなっている。これにパンクやインダストリアルっぽいロックなど様々なジャンルが加わったようなサウンドに、3人によるVocal, Chorusが加わって、まさに彼らならではのアルバムとなっている。制作もメンバー中心で、ちょっとローファイなところもあるが、アップで高揚感の感じられる曲も多い。
No.10
Doja Cat / Scarlet
近年、勢いを増す女性Rapper陣の中核をなすDoja Catの2年ぶりの3rdアルバム。前作はPopな方向に振った感じではあったが、今作は初心に戻ったのか、Hip-Hop色を少し強めている。ただ、中盤以降ではコンテンポラリーなR&B曲も続き、トータルでは、今どきのHip-Hop Soulとして象徴的な作品になっている。
また、主な制作陣は、Earl On The Beat, Kurtis McKenzieあたりと、そこまでメジャーな人たちではなく、ゲストも無しと自身のアーティストパワーに相当、自身がありそうだ。
TrackはTrap色が強く、とんがった曲も多くて、力がこもったものになってる。Doja Catも攻撃的でストレートなRap, 唄うようなRap, しっとりした歌唱と、曲に応じて、様々な面を魅せている。